技術情報Vol.2で説明している1磁極型のバランスドアーマチャーの構造をみて、従来構造のマグネチック型ではないかと、ある程度知識の在る方はその様に思われるようなので、もう少し掘り下げた技術的な内容を、ご紹介したいと思います。
下記グラフは一般的なマグネチック型で、ユニット内の力の関係を実測した値をグラフで表にしたものです(恐らく実測値のカーブをご覧になるのは、一般の方では始めてはないかと思います)。
下記グラフは、技術情報Vol.2でご紹介した1磁極型バランスドアーマチャー型ユニット内の力の関係の実測グラフです。
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ユニット内の力の関係をもう少し説明します。
下図、赤丸部で発生している力を測定したものです。 |
S(Positive stiffness):
振動板の変位と復元力を現しています。 |
S'(Negative stiffness):
振動板に発生している吸引力、振動板変位位置と吸引力を現しています。 |
S-S'(Positive stiffness - Negative stiffness):
振動板の復元力(S)に相反する力(S')の差の振動板は、このS-S'のカーブ上で機械運動を行います。 |
均衡点:
復元力(S)と吸引力(S')が同じ力で均衡している点 |
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次のグラフは、上記のグラフの均衡点位置を合わせ(S-S')を比較しました。
本題に入ります。
この構造で吸引力及び、電気信号から機械運動力を決定するのは、構造図赤丸部の間隙です。
その間隙は、磁石、ポールピース、エッジ3点により作られています。それ以外の大きな要素としては磁石そのものの吸引力のバラツキ、振動板のStiffnessのバラツキも加味しなくてはなりません。
そう言う構造上の条件で、更に S>>S'にしておかないと安定した動作を得る事が出来ません。
※SよりS'の力が大きいと振動板はポールピース及び磁石面に吸い付いてしまう。
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こう言う制約の中で組み立てられているのが一般的なマグネチック型です。 |
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1磁極型バランスドアーマチャーは、基本的な制約は同じですが、大きな違いは従来構造では得る事が難しい(S-S')のθ角を小さく取り、更に一定のθ角を得る為に、力のバランスを1台、1台調整するところにあります。
この調整により、従来のマグネッチック型では得る事が出来ない性能を得る事が出来ます。
こう言う理由により、1磁極型バランスドアーマチャータイプと表現しています。 |
従来からある構造ですが、ブラシアップする事により、他の音響変換機では真似が出来ないような高変換効率、音響特性を持つ変換機に生まれ変わる事が出来ます。
単なるステレオイヤホンもこれからは、省エネ!(高変換効率=使用機器の消費電流が少ない)昨今イヤホンを利用されている方が非常に多くなっている時代ですが、一度弊社の1磁極型バランスドアーマチャーのイヤホンをご利用いただくと、従来ご利用されているものとの違いを一目瞭然の音質の違いを感じていただく事が出来ると技術者として確信しております。
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参考資料 |
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左図は一般的な電磁型変換機(マグネチック型)を紹介している、著書に記載されている力のカーブです。 |
赤で囲った部分が、上記で示した実測のグラフの部分を示しています。 |
S: |
左図グラフA |
S': |
左図グラフB |
S-S': |
左図グラフC |
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このグラフのような力の関係で設計をしてしまうと均衡点が2点(Cのカーブと交差している点線P、Q)発生し、非常に不安定な動作になってしまいます。 |
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所見:
以下の2点の概念から、力の関係を作図されていると推測します。
A:磁石の吸引力は一般的に言われている距離の2乗に反比例する。
B:スチフネスのカーブはリニアな変化を示す。
力の関係を測定したグラフからご理解していただけると思いますが、電磁型変換機(マグネチック型)は、全てが上図のような均衡点が不安定になるような力関係にはないという点をご理解下さい。
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